2005年9月〜12月の旧酔っ払いの戯言









12.26 昨日で今年最後のN響定期公演が終わった。広上淳一さんの指揮でハイドンの「天地創造」は、とても楽しんで演奏できたので嬉しい。広上さんはオケに変なプ レッシャーを与えることもなく気持ち良く演奏させてくれるし、何よりも楽しんでいる様子が伝わってくるのでこちらもついつい乗せられてしまう。客席から見 ても伝わるらしく、聴きに来た友人が「後ろ姿を見ているだけでもどういう音楽がしたいかよく解る」と言っていた。「天地創造」は読んで字のごとく、神が天 と地を分けるところから始まり、陸地が出来て植物、動物が生まれ、人間、そして夫婦・・・と、基本中の基本のようなことが歌われている。暇なときに字幕を 読みながら、「ヨーロッパでは音楽を通して世の中の基本を自然と学んでいるんだなあ」なんてことをボーっと考えていた。子供のためのコンサートとかで、 漫画などの映像と合わせてストーリーを解りやすくしながら演奏する、ってのも面白そう。たった2時間だが、年末の慌ただしい時期にホッと一息付けたような 気がした。 終演後は山浦食堂で埼玉忘年会、ベロベロになって帰宅。帰ってからはほとんど覚えていない。

12.23 高校1年で買った山水のアンプがとうとう壊れたので、新しいアンプをインターネットで購入。山水はもうなくなっていたので、DENONのちょっと古いもの を安く入手した。普段それほどステレオを聴くわけではないのでそこそこの音が出ればいいかなと思っていたが、新しいシステムで音を出してみると今までと違 いがはっきりとしていて興味深い。用もないのに今まで聴かなかったCDやDATを引っ張り出して愉しんだ。 N響はこのChristmasも定期演奏会である。今日も練習をし、夕方弟子を教えてから、軽く飲みに「みのる」へ出掛けたら、連休初日で忘年会シーズン の今日はほぼ満席。マスター一人で切り盛りする店なので注文するタイミングも難しい。いつもならロト6の話題で盛り上がるのに、今日はそんな暇もなさそ う。ビールを2杯飲んで早々に退散、外は寒い。ラーメンが食べたくなる。自転車でふらふら探してたら駅前にラーメン「北国」の屋台が出てたので、そこで1 杯すする。美味い!濃いめの醤油スープに厚切りチャーシューと細目のメンマ、ワカメが細麺とよく合う。今日は天麩羅をトッピング、〆て550円。寒い夜に 熱々のラーメン、食べながら大将と世間話をして気持ち良く帰宅した。

12.20 まろさんのバンドで16日下関、17日宇部へと行ってきた。強烈な寒波が日本列島を覆っていたため、下関でも小雪がちらつく天気。ホントに寒い。宇部では 夕方から降り出した雪が夜には積もっていて、一体どこに来たのか解らない。道路は踏み固められた雪が凍り始めて足下もおぼつかない。凍えるような寒さから 逃れるように近くのラーメンやさんに入る。松田君の話だと宇部のラーメンは九州系だとか、その話通り豚骨スープの美味しいラーメンだった。あっという間に 大盛りを平らげた。翌朝は一面真っ白で飛行機が飛ぶかどうか心配。全日空は機材をやりくりして無事飛んだが、日本航空は欠航になっていた。 羽田に無事着いたので、急いで大宮のヨコタ眼鏡に行って注文していた眼鏡を受け取る。約2年ぶりに作った新しい眼鏡は、前回と同じドイツ製フレー ,Neostyleのもので、これまで何度も買おうかどうか迷った揚げ句買わなかったやつ。ヨコタのおやじも「これをかけてる人は多分いないでしょう」 と言うくらい、かなり独創的なデザイン。それが実際にかけてみると顔に違和感なくフィットするから不思議だ。デザインが素晴らしいのか顔がそれ以上に独創 的なのかよく解らないが、また楽しい眼鏡のコレクションか増えた。

12.14 先日のオペラ公演のリハーサル中から、楽器の弦コンディションを変えた。といってもE線を生ガットにしただけなのだが、これ一つだけでずいぶん印象が違 う。僕はガット弦が好きなので、普段は基本的にピラストロ製のオリーヴをA~G線に使っている。A線だけはオイドクサだったりゴールドを張ったりもした が、結局オリーヴが一番相性がいいようだ。どれもガットにアルミを巻いたものである。これらに対してE線だけは市販されているほとんどがスティール弦だ。 インフェルドの赤、青、ゴールド・ブラカット、ゴールデン・スパイラルなど使い慣れている弦もいくつかあるが、他のガット弦とはやはり異質な感じがするの は仕方がない。日本では開放弦を多用するのを嫌う傾向があるし、E線の開放弦を使って金属的に響いたときは弾いてる本人もドキッとするのでなかなか使いに くいのだが、生ガットのE線にしてみたらそういった『異質感』はなくなった。それ以上に古の響きというか、なんとも柔らかい響きが気持ちいい。ただ、今ま でのスティール弦は触るだけで音が出てくれるのに、ガット弦はちゃんと発音しないとそれはそれでなんとも情けない音になってしまうのが難点だ。この季節は 乾燥していてガット弦を使いやすい気候。しばらくこのまま試してみようと思う。

12.9 今週は東京オペラグループの「コシ・ファン・トゥッテ」のピットに入っている。全曲を通すだけで3時間以上かかるので、短い期間でオケ・リハ、2組のキャ ストとの歌合わせをこなすのは体力的にキツイ。昨日は2組分のGPがあったので、丸々2回通したことになる。さすがにばてたが、全体的な流れを掴めたので 結果OK 練習は長くて大変だが、本番が始まってしまえば楽しさの方がぐっと増す。僕は舞台が良く見える場所に座っているため、舞台が見えてとても楽しい。結構細か い芝居してたりする。このオペラは2幕で出来てて、1幕はテンポの速い曲が多くあっという間に終わるが、2幕になるとテンポの遅めで心情の変化を訴える曲 が多く、気が抜けない。大抵その頃には集中力も落ちてくるので要注意。今日はフィオルデリージ、ドラベッラ、デスピーナ女性3人の歌に感動。フィオルデ リージ&ドラベッラの二重唱は本当に素晴らしかった。今でも頭から離れない。明日もう一回やったら終わりのこのお仕事、オペラは楽しくなったころに終わっ てしまうのが残念。

11.29 今日も練習、コウトはやっぱりいい。不器用さがまたたまらない。なんのこっちゃ。「70近いじいさんがハァハァ言いながらマルティヌーの交響曲の良さを伝 えようとしている」、普通じゃ考えられない。午後はピアニスト付きでブラームスの協奏曲第2番の合わせ、ソリストはヘルムヘェンというパッと見た感じ F.W.メストとシューベルトを足したような若い兄ちゃんで、速めのテンポでどんどん進んでゆく。さすがに指揮者と呼吸の合わない部分が多く、置いてかれ るヶ所がいくつかあったが、お互い話し合って歩み寄っていく。コウトは年上ぶる事もなく、この若いソリストになんとか上手く寄ろうとする様子が見ていてほ ほ笑ましい。明日もう一回合わせて、明後日から本番。

11.28 先週は怒濤の一週間だった。N響定期公演+大阪公演で3回、それに名古屋と東大宮でそれぞれ室内楽と5連続本番。しかも東大宮は短いプロながら2回演奏し たのでヘトヘト。いろいろ反省点もある、シューベルトの弦楽三重奏はなんか妙に弾きにくく、一回弾いた後は身体があちこち痛くなってしまう。きっと無理な 力があちこちに入っているんだろう。リハーサルではリラックスできるのに、演奏会になると思い通りにならないのが本番の難しさだ。逆に名古屋で演奏したブ ラームスはもう一度どこかで弾きたくなった位、だいぶ気に入ってきた。音程が取りきれないところもあったし、空回りしてたとこもあったけど、次回はもっと 上手くいくようにしたい。 今日からN響は同じくイルジ・コウト指揮でマルティヌーの交響的幻想曲の練習が始まった。身体の中から表現したい欲求を抑えきれないコウトから、馴染みのないマルティヌーの良さが伝わってくる。

11.21 12日に雫石で恒例のラ・ラ・ガーデン・コンサートに出演したあと、更新が途絶えてしまった。というのも16日から極度の頭痛に悩まされ、食事もまともに とれない状態にだった。それでも仕事は休めない。先週の定期(バーメルト指揮でブルックナーの6番)では、オーボエ和久井のロビー・デビューに一緒にボッ ケリーニの五重奏を演奏することになっていたから。それさえなければいっそ休みたかったが、折角の和久井デビューにフルートの神田と同級生3人が演奏でき るのはそうないこと。何が何でも演奏したいので、薬で抑えて乗り切った。土曜日の夕方に医者に行ったら肩凝りから来る頭痛だそうだ。お陰でこの1週間以上 酒も飲んでいない。 今日はJ.コウト登場でブラームスの4番他の練習。この人、練習の要領は良くないけど楽譜をよく知り尽くしているというか、真っ正面から楽譜に向き合って根っからの音楽家という感じでとても良い。熱くさせてくれる指揮者だ。本番が楽しみ。

11.6 炎のコバケン、N響に登場!明日のオペラシティで演奏会のリハが、今日あった。『エグモント』、『新世界』などのポピュラー・プログラムだが、しっかりコ バケン節が入っていて面白い。ハンガリーやチェコをはじめ世界で活躍しているだけあって、さすが!と思わせる部分が沢山あった。指揮者に集中させる術は、 ある意味小澤さんと似ているような気もした。これは明日も楽しみだ。 天気が悪いからか、やたら眠い。

11.3 今日もサントリーホールでギルバート指揮の定期演奏会。「イタリア」は昨日より良かったかな。僕は対向配置が好きだが、サントリーホールのようにステージ の後ろにも客席があるとその分壁が遠くなるので、上手側に座っているsecond violinは相当弾かないと音が聞こえないんじゃないか。チューリヒ のトーンハレや、ウィーンのムジークフェラインのように、シューボックス型の大きすぎないホールが対向配置に適していると思う。もっとも、ベルリン・フィ ルのように、演奏者が客席の方ばかり見て弾くアピール度満点のオケなら話は別だが。 本番前にアークヒルズ内の本屋で買い物をしたら、キャンペーンで整髪料を配っているとのこと。冗談で「髪の毛は増えないんですか?」と訊いたら、「あ~そ れは、申し訳ありません」ととてもすまなさそうに謝られてしまった。軽く笑い飛ばして欲しかったのに。かえってこっちがショックだ。

11.2 本来ならサヴァリッシュが振る予定の定期、彼自身も来るつもりであったであろう演奏会を、代役のアラン・ギルバートが同じプログラム「イタリア」「田園」 で見事にこなした。その場で弾いていた僕が「見事に」と書くことに違和感を感じる部分もあるが、ギルバートの音楽は本当に素晴らしかった。ヴァイオリン対 向配置で慣れない部分もあり緊張したけど、とても楽しい本番。ベートーヴェンを真っ正面から向き合った「田園」、今回の練習で彼から学ぶことが非常に多 かった。なんだろうなあ、結局楽譜に書いてあることを彼は普通に要求していて、それが至極真当で、見ててもファンタジーが溢れてて、それ以上でもそれ以下 でもない、とても幸せな瞬間だった。明日も同じ演奏会だけれども、また明日は違う良さが出そうな予感がする、ホントに幸せな一時だった。 終演後、行き付けのお寿司屋さんで飲んで帰る。こちらも幸せな一時。

10.30 日曜日にリハや本番が無いのは、最近珍しくなってきている。N響の定期も土日に本番が絡むプロが2つあるし、B定期のリハは日曜日から始まることが多いか らだ。来週にあるB定期のリハも本来なら今日からだが、1日へって今日はoffで、日曜日らしい日曜日を送った。日高にあるサイボクハムの工場までベーコ ンを買いがてらドライブし、帰ってきてからそのベーコンを使って初めてカルボナーラを作ってみた。テレビでレシピをやっていたそのままを再現したつもり が、味は今一。これからカルボナーラは外で食べることにしよう。

10.28 今週月曜日から昨日までちょっとアルバイトで、都内某オケのエキストラ出演。朝からリハだったので、これで時差ボケが解消されるかと思ったが、練習が終 わって家に帰ってくると眠くてしょうがないのでついつい寝てしまい、気がついたら夜。結局夜は眠れず、明け方までビデオを見たりして未だに時差ボケが残っ ている。昨日も本番後、いつも行く近所の居酒屋でひとしきり飲んで「これで帰ったらぐっすり眠れる!」と思っていたのに、眠れず。本番の後でテンションが 高かったのかも。ゲームしたり「どっちの料理ショー」をみたりして寝たのが4時半。何とかしなければ。 今日はoff~。前夜寝たのが4時半なので、起きたのは12時前。マズイ。掃除機かけたり、家事雑用をしてちょっと練習して、夜は山浦食堂へ。本当は昨日 飲みに行きたかったけど、昨日は定休日。待ちに待った山浦食堂には、戻りカツオの刺し身や牡蛎フライなど、僕の好きなものばかり。美味しかった。

10.23 未だ時差ボケが完全には抜けていない。昼過ぎに強烈に眠くなるので、今日も昼寝。未だウィーンにいる夢を見る。場所はどこだかわからないが、昔行ったことのあるレストランで食事をしようとしている場面だった。そろそろ現実に戻らないと。 飼っている金魚の一匹、琉金というのだろうか、ひらひらの付いたやつ「銀次」が人工の水草の隙間でうずくまっているなと思っていたら、実は前にも後ろにも 進めず動けなくなっていた。慌てて救出した時にはすでに遅く、ひれはボロボロ、体表も傷だらけでまともに泳げなくなっていた。別の容器に移して薬浴させて みたが回復することなく、ついに亡くなってしまった。銀次以外は和金で泳ぎも早く、最初は追い掛け回されていたがそのうち上手く競泳するようになり、最近 ではブクブクと大きくなって貫録も出てきていたのに。1年以上生活を共にしていただけに、ショックが大きい。

10.17 16日リスボン公演を午後11時に終え、軽く食事をしてホテルに戻る。17日は飛行機でスペインの首都マドリッドへ移動、そして演奏会。マドリッドの開演 時刻は午後7時半、今日は再びレーピンがベートーヴェンの協奏曲を前半に演奏し、後半はドビュッシーとラヴェルのAB混合プロ。レーピンはここでも喝さい を浴びていた。 この頃になると、さっさと仕事を終えて日本に帰りたくなってくる。「仕事で海外、いいですねえ」なんてよく言われるが、できれば仕事無しでの海外がいい。 それでも楽しみといえば、各都市での食事だ。マドリッドも魚介類かと思っていたらもともとは肉の方が有名だったそうで(確かに内陸部にある)、ヴィオラの 小野富士さん、小畠とともにスペイン風焼き肉を食べに行くことに。スペイン語のメニューのみでさっぱり解らん。ここで小畠が本領発揮!イタリア語を駆使 し、そのレストランの名物焼き肉とサラダ、ワイン等を無事注文。その料理とはスライスされた生肉(表面はかるく炙ってある)には、岩塩が大胆に振ってあ り、それを目の前に出された熱く熱されている陶板のようなもので自分で焼いて食べるもの。これは美味かった!3人で肉1キロをあっという間に食べてしま い、もう500グラム追加。ワインも2本、仕上げにお店のサービスでグラッパを引っかけ、ヨーロッパ・ツアーを打ち上げた。
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左が肉、右手前の熱いお皿で焼いて食べる

10.15 昨日はバスでブダペストへ移動、そして演奏会。今回のツアーは二つのプログラムで廻っている。ベルリンとウィーン初日がショスタコーヴィチの8番のプロ、 ウィーン二日目(昨日)からはダフニスやドビュッシーのプログラムなので、一通り演奏して気分も落ち着いた。バスでは和食弁当が用意されるとのことを予め 聞いていたので、ちょっと期待。ウィーンで『和食弁当』というとツアーでよく出されるのが『天満屋』の弁当だ。果たして期待通りの『天満屋弁当』で、日本 の弁当に馴染みのある人には別にどうってこと無い弁当なのだろうが、ウィーン留学中は前は通れど立ち寄ったことの無い高級レストラン『天満屋』と聞くだけ で嬉しいのだ。ハンガリーはEUに加盟したとはいえ、国境では一人ひとりのパスポートを念入りにチェックするし、オイロは未だに流通していない。国境を越 えバスの揺れも若干大きくなって約2時間、ブダペストに到着。今回のホールは新しくできたところで、町の外れに突然真新しい建物が現れる。 n_eu09.JPG
終演後、食事に繰り出そうとタクシーを探したが見つからず、近くを歩いていた日本人留学生に聞いたら、ハンガリーではタクシーは電話で呼ぶのが普通らし い。流しもあるのだが、値段の設定がまちまちなのでぼったくられることもあるとか。お願いしてタクシーを呼んでもらった。とても助かりました、どうもあり がとう。 今日は演奏会の無い、リスボンに移動するだけの日。ハンガリーから飛行機で約4時間、時差1時間でリスボンに到着。ここは海に近いので、新鮮な魚介類が楽 しめる。それとファド(Fados)、小さなレストランで食事をしながら、もしくはお酒を飲みながら、そこのお抱えの歌手の歌を聴くのもちょっと楽しみに していた。今日は土曜日で店が混むからツアーデスクでファドの予約をしてもらい、それまで魚介類を食べに行く。エビの山盛り、イカのフライ、タラのグリ 日本人で良かった、リスボンに来てよかった。 n_eu10.JPG
エビの山盛り! n_eu11.JPG
ファド

10.13 今日もムジークフェラインで演奏会、プログラムが替わり、ドビュッシー『遊戯』、ラヴェル:『ダフニス』第2組曲などのプログラム。テレビ収録もあり、天 井から沢山のマイクがぶら下がっている。昨晩の終演後からたった数時間でテレビ用照明のやぐらが組まれていて、手際の良さに感心する。ニューイヤーコン サートなどで普段からやり慣れているからだろう。カメラクルーも現地の人だったので、NHKのカメラワークとは違った画像が楽しめるのではないか。 n_eu07.JPG
照明用やぐら
終演後は地元のビールGoesserを飲みに行った。雫石でお世話になった鈴木理恵さんやRicoも一緒で、日本語、英語、ドイツ語が入り交じった飲み 会。Ricoのパワーは凄い。頭の回転が早いというか、あっちこっちとどんどん話が展開していくので、酔った頭はだんだん付いていけなくなってしまった。 n_eu08.JPG
午前中のリハーサルのあと、クリスティアン先生の御自宅を訪ねる。先生にお会いするのは約2年ぶり。とても暖かく迎えて下さり、お茶を飲みながら今回のツ アーのことや帰国してからのことなどいろいろお話しをした。僕にとって、ウィーンでの1年間は何ごとにも替えがたい経験だった。特にクリスティアン先生の ベートーヴェンやブラームスの演奏を間近で体験したのは、僕の演奏感をまるっきり変えるほど強烈だった。『血が騒ぐ』、それほど熱かった。日本で忘れない ようにと思っていても、いつの間にかである。今日、先生のお宅にお邪魔してパワーをいただいた気がした。

10.12 飛行機でウィーンに移動、そして昨日に引き続いて演奏会。ウィーンは僕にとって、忘れられない場所だ。ベルリンもドイツ語圏だが、ウィーンに着くと何故か 落ち着く。本当に嬉しかった。ホテルについてすぐ、街に繰り出す。昼ご飯を食べてなかったので、僕がお奨めの中華料理屋さん『食林閣』にオーボエのWや ティンパニのKさんたちをお誘いした。ランチ・タイムを過ぎていたので、お店がやっているかどうかとても心配だったが無事食事にありつけ、しかもみんなが とても美味しいと絶賛してくれたのでホッと胸をなで下ろす。 この日はついに、ムジークフェラインでの演奏会。N響がここで演奏するのは約30年ぶりだそうだ。アシュケナージはリハーサルから「ムジークフェラインは よく響くので、音量を注意しなければ」と、とても神経をつかってコントロールしようとしていた。このホールは本当に弾きやすい。ベルリン以上だ。確かに よく響くけれども、それほど神経質にならなくても助けてくれそうな感じがした。留学中1年間聴き続けたホールの響きがとても懐かしく、当時の数々の演奏会 を思い出させてくれた。このホールで演奏できたのは、とても幸せな体験だった。
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この黄金の輝き!
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リハーサルを待つアシュケナージ

10.11 昨日一日リハーサルがあり日本公演でのおさらいをする。リハの会場はUniversitat der Kunsteというかつてベルリン・フィルとカラヤンも演奏していたという所だと、アシュケナージが言っていた。リハのあとは、スペイン料理を食べに友人 に連れていってもらう。素晴らしく美味い。閉店を過ぎても飲み続け、とてもいい気分でホテルに戻った。 今日はついにベルリン・フィルハーモニーでの演奏会、我々のリハーサルの合間にはベルリン・フィルがD.ジンマンとのリハーサルをやっていた。僕はこの ホールで弾くのは初めて。弾いた感じではとても弾きやすい。まんべんなく丁度よいバランスで聞こえてくる。やっぱりホールで練習、本番と続けてできること は、オーケストラの音を作っていくうえで必要不可欠なことだと実感した。今日のプログラムはレーピン独奏のベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲とショスタ コーヴィチ:交響曲第8番。レーピンは、東京の演奏よりさらに内に強く訴えかけてくる演奏だった。
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ステージの上で
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右がベルリン・フィルの、左がN響の指揮台
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大学の同級生、左から和久井ob.池上trb.天野ob.

10.9 今日は一日OFF、時差調整の日である。ベルリンは留学中に一度来たことがあり、その時廻った場所をもう一度訪ねてみる。やはりベルリンの壁があった箇所 は、今でも生々しさを感じるし、それがたった15年前まであったということに改めて恐ろしさを感じた。この日の夜はアーノンクール指揮ベルリン・フィルの 演奏会を聴きに行く。シューベルトの珍しいオペラのしかも演奏会形式で内容は良くわからなかったが、アーノンクールの音楽感とベルリン・フィルの響きに感 動。早くもヨーロッパの空気に楽しみを感じている。

10.8 N響ヨーロッパ・ツアー中。8日朝成田を出て、フランクフルトで乗り換えてベルリンに着いたのが現地時間の午後6時半。約14時間の移動は疲れる。なんで ベルリンの上空をかすめて、遠いフランクフルトに行ってから戻らなければいけないのか、直接ベルリンに飛ぶ飛行機があれば11時間で着くだろうになんて 機内で考えていたが、降りてみればその辛さもすぐ忘れてしまう。早速夕食を食べにホテルを出る。近くの大衆レストランのようなところでビールとグリルテ ラー1皿でお腹いっぱい。美味しくて値段も安かった。これは幸先良さそう。

10.2 急にアマチュア合奏団のソリストを頼まれ、さいたま新都心で本番。当初予定していたソリストが急病になってしまい人伝てに連絡が来た。頼まれたのが演奏会 3日前、しかもこの日本当は室内楽の合わせがあって受けられないかと思ったが、予定の変更ができるかどうか確認してから決めよう、もし予定が変更できたら これはやらなければいけない仕事なんだ、と考えメンバーに連絡をしたら、「是非やって来い」と温かい言葉をかけられ、決めた。曲はヴィヴァルディの「秋」 で、本番前日に集まれるメンバーと合わせ。合わせの前はアシュケナージ指揮のN響定期公演、ショスタコーヴィチの8番があり、意識朦朧とした状態だったけ ど、合奏団のメンバーは非常に一生懸命にやってくれて居心地が良かった。演奏会当日、初めてのメンバーとの最終合わせも問題なく終わった。本番は多少緊張 したけど、まずまず。去年弾いたときに比べればだいぶマシかな。

9.25 上陸することもなく房総沖をかすめただけの台風17号だが、遠くても台風、朝から北風が強く一気に寒くなった。昨日今日とアシュケナージ指揮のN響定期、 ドビュッシー『遊戯』とラヴェル『ダフニス』第2組曲をメインに、R.シュトラウスの大好きな『四つの最後の歌』他のプログラム。この10月のヨーロッパ 公演の曲目でもある。ドビュッシーとラヴェルはデュトワの得意曲だし、かつてみっちり鍛えられたこともある。今回も弾いていて、個人的にそういうヶ所を思 い出してはデュトワの影響力を改めて実感した。シュトラウスは本当に素晴らしい曲。練習中から曲の素晴らしさに鳥肌もんだった。シュトラウスはミュンヘン の人だが、この曲を聴いているとウィーンのムジークフェラインを思い出す。ホールの窓から夕日が差し込んでホールがほんのり黄金色に光る感じが、この曲に ピッタリなのだ。嬉しいことにそのムジークフェラインでこの曲を演奏することになっているので、今からとてもワクワクしている。演奏会が終わっても、まだ シュトラウスが頭から離れない。
今年の秋味は美味い。

9.22 18日演奏会前の午前中、雑用に追われ急いでいたせいもあり、車を道から飛び出ていた突起物に思いっ切りぶつけてしまった。発車させる時だったので衝撃も なければケガもなかったのだが、車のドア部がベッコリと凹んでしまった。僕は車は基本的には安全に走れればいいと思っているので、少々の傷など気にしな い。その時もショックだったけど、しばらくしたらどうでも良くなったので、そのまま走っていた。ところが夕方、車の中から窓を開けて挨拶をし颯爽と会場を 後にするハズが、変な音が凹んだドアから聞こえてきてそのまま窓が閉まらなくなってしまった。こうなるとさすがに直さないとマズイ。すぐさま保険会社に電 話して自損事故の手続きをしてから、まだ営業時間内の近所のディーラーへ入庫。 後日、保険の代理店から電話を貰う。事務的な話を済ませたら、代理店の方は「これからだいたい3ヶ月は慎重に運転して下さい。」と言うのでどういうことか 訊いたら、その方の経験上、事故や違反で捕まるときは運気が下がっているときで、そういうときは事故が続きやすいので気をつけろということらしい。僕は車 にいつも交通安全のお守りをぶら下げているが、最近守られたんじゃないかと思うことが多々ある。先日も前方の信号が青だったので急いで直進しようか迷った が、別に急ぐわけでもないのでゆっくり走ったら、その交差点を信号無視して車が突っ切っていった。もし急いでいたらと思うと、ゾッとした。また、一週間 ほど前も、信号機の無い交差点を左折しようとしたら逆走してくる車がいてぶつかりそうになったし。ちょっとした違いなのだが、結果大きな違いになるかなら ないか、運は大切にしよう。

9.21 18日はLibera! Chamber Music Seriesの特別演奏会、19日は同じメンバーで川越での演奏会(ラ・ラ・アーツ主催)と、この1週間はその準備で忙しい毎日だった。今回の演奏会は ウィーンで大変お世話になったGeorg Sonnleitner&中嶋リリ子さんご夫妻の来日(帰国)に合わせて企画した。埼玉の演奏家4人とウィーンの2人で、ベートーヴェンの六重奏 曲とモーツァルトのディヴェルティメントK.334。ただなかなか予定が合わないのと手頃な会場が無いのとで一時は諦めかけていたのだが、3ヶ月を切って いたにも関わらず日程と会場が上手く調整できて、どうにか演奏会を開くことができた。 彼らは時差ボケのとれないコンディションなのに、リハーサルと演奏会に広い東京をあちこち連れ回してしまい大変だったろうと思う。お陰様で、予定していた 席数をオーバーする程のお客様と共に、我々も多いに楽しんで演奏できた。ベートーヴェンは弦楽四重奏と2本のホルンだが、モーツァルトはできればコントラ バスを入れて演奏したい。ただ予算の関係で今回はチェロ1本でお願いしたが、田澤さんは本番で何ヶ所か1オクターブを下げて演奏してました、さすが田澤さ ん! 18日はいつもの山浦食堂で打ち上げ、19日は川越のステーキハウスでドイツのビールとともに美味しい一時を過ごした。帰り道、閉店時間を過ぎた山浦食堂にもう一度行って、クールダウン。我が家で飲むような気楽さがいい。
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終演後のスナップ domkoerschonaka.JPG
食後のお腹

9.6 台風シーズンではあるが、今回の14号はかなり強烈な台風だ。アメリカではハリケーン「カトリーナ」で大打撃を受けたそうだが、それとほぼ同じサイズの台風14号は遠い奄美諸島にいるにも関わらず、関東地方に大雨を降らしている。 そんな中、4日はオーチャード、5日は浜松で前回と同じP.スタインバーグの指揮で、「新世界」他を演奏してきた。いくら自然の所為とは言え、演奏会場に は何が何でも行かなければいけないし、行こうとしてしまう。今回も楽屋で、昔N響の大先輩が、鉄道が止まったので自転車で松山から高知に行ったら演奏会が 中止だったとか、信じられない昔話をいろいろ聞かせてもらった。最近では、去年の松山公演に飛行機で入ろうとしたメンバーが、着陸できずに羽田に戻ってし まい、新幹線で広島に行き、そこからタクシーで松山に入った、のが大変だっただろうけど笑える。

9.2 2006年のシーズン開幕!831,91日とサントリーホールで2005-6年シーズンの定期演奏会が開幕。今年はいつもより早め。そんなことはた いしたことではない。個人的なことだが、楽しんで演奏できたのが何より嬉しい。正月休み明けやシーズン開幕など節目になる時期に上手く波に乗れるかどう か、ちょっとした事だが気になってしまう。去年はいまいち波に乗りきれなかったしなあ。今年は良いシーズン開幕だった。指揮はP.スタインバーグでモー ツァルト・プログラム。8年ぶりのN響登場、前回は確かマーラーの「巨人」やR.シュトラウスの「英雄の生涯」をやったような気がする。今回はオール・ モーツァルト、前半に「ドン・ジョバンニ」,「魔笛」,「イドメネオ」の序曲とH.リッパート独唱のアリアが3曲、後半は「ジュピター」。スタインバーグ のモーツァルトは今流行のではなく、古きよき時代のものか。楽譜もブライトコプフ版だったし。興味深かったのが、何ヶ所か弓の位置から腕の高さまで細かく 指示したこと。普通、音色のイメージを伝える際に、手首の角度まで指示されることはそうあることではない。さすが元ヴァイオリン弾きならではの的確な指示 だった。