11月 2002

2002年11月〜12月のウィーン日記









12.31
今夜はCさんちで年越し天麩羅パーティ。日本から来た蕎麦もあるので天麩羅蕎麦だ。ウィーンにいても日本の年越しを味わいたい。他にも炊き込みご飯や雪見鍋(豆腐と大根おろし、ネギのみのシンプルな鍋)を考えている。ではよいお年を・・・・。

12.29 今日はてっきり月曜日だと思い込んで、演奏会のチケットや買い物を済ませようと街に出掛けた。地下鉄はいつもの6両ではなく4両の「Kurzzug」、年 末だからかなと勝手に想像してOper周辺を歩いていても全ての店が閉店。当然チケットも替えず、歩いてナッシュマルクトに向かった。やはり全て閉店。 「月曜でこれじゃ、年越せないな」とまだ気付かぬまま、大晦日年越しパーティ企画中のCさんに電話。「なんにも買い物できないよ」「だって、今日は日曜 日」「えっ!!」ってなわけでとんだ勘違いでした。あ~、安心した。このままじゃ、食料品なしのまま年越しかと思ったくらいだから。でも今日は本当に気持 ちのいい晴天、いつもならまだ寝ていたい時間でも跳ね起きてしまうくらい気持ちのいい天気だったので、思わぬ散歩ができて嬉しい。 いつもなら夜10時まで練習をしてから夕飯になることが多いが、今日は空腹に負けて7時頃にすでに食べてしまったので、10時から飲みだした。先日友人が 持ってきてくれたイモ焼酎を飲みながら、シモーネ・ヤング指揮のブルックナー6番を一気に聴く。チケットが売り切れてて聴きに行けなかった演奏会のライヴ 放送だ。昨日もそうだけど、大曲をじっくり聴く時間があるのは幸せ。ヤングのブルックナーはオケがよく鳴っていて聞き応え充分、良い曲。昔弾いた記憶はあ るが、こんな良い曲だとは思わなかった。次回弾くときが楽しみ。 ヤングのブルックナーを聴きながら日本の雑誌を見ているとラーメン特集が載っている。あ、なんて残酷な!!身体に悪そうな脂ギトギトのラーメンが食べた いぃぃぃ。いけないと思いつつインスタントラーメンを手に取って眺めて、「具のないラーメンなんて・・・・」と聞き覚えのあるフレーズを口にしてから諦め る。今日は柿ピーで我慢しよう。

12.28 年の瀬か。例年なら「第9」を弾いて、連日何かにつけて口実を見つけては飲み会で気がついたら年末。テレビでは特番の嵐。今年も気持ちだけは年末なんだ が、することもなくテレビも見ないし、語学学校が無い分時間が沢山ある。でも気分は正月モードだから練習もそこそこになってしまう。 そんな中、毎日の楽しみはラジオ。日本製のラジオでは受信できるチャンネルが限られていて、もっぱらオーストリア第1放送ばかり聴いている。でもこれが ウィーン・フィルの生中継から、ベルリン・フィル、ロンドン・プロムスなど涎物のプログラムで攻めてくるので嬉しい。2,3日前はプロムスからメンデルス ゾーン:「エリア」/マズア指揮LPO、今日は過去のザルツブルク音楽祭からミトロプーロス指揮/メンデルスゾーン:「スコッチ」やR.シュトラウスの 「アルペン・シンフォニー」等・・・。それらをMDにダビングして夜のお酒のつまみとして聴いている。今聴いているのは「エリア」。この曲は去年のサヴァ リッシュを思い出すなあ。マズアの演奏も素晴らしいんだけど、去年のサントリーホール、サヴァリッシュは神がかっていたとしか思えない。彼によってすべて を心の奥底に強く叩き込まれた気がする。何が凄かったかって表現できないけど、《二度と忘れない演奏にさせられた》というのかな。気がついたら身体中に染 み渡っていた・・・・。「エリア」という1作品を一つの物語として、あれほど完成された棒、音楽で演奏できたのは本当に幸せだったと思う。 とまあ、こんなことを感じながら一気に「エリア」を全曲聴けてしまうのも、ヨーロッパならでは。

12.26 世の中クリスマスモード一色である。どこもかしこも電飾で飾られて奇麗だ。語学学校で知りあった台湾人が「行くべきだ」と言ってたので21日の夜、ウィー ンのラートハウス前にあるクリスマス市場に行ってみた。寒い中を大勢の人が集まっている。洋風の縁日のよう。ただ日本と違って大人が楽しんでいる。温かい ワインを片手にずーと楽しそうにしている。 2325日はドイツにいる妹の誘いもあって、ミュンヘンで過ごした。23日はバイエルン州立歌劇場で「トスカ」を見る。舞台の半分が見えなくて一体何が 起こっているのかさっぱりわからなかったが、オケは上手かった。ウィーンと違って重心が低い響きがする。来月早速ウィーンで同じ「トスカ」を聴くので聴き 比べが楽しみ。 そして24日のイヴ。日本の色気づいたイヴと違い、生活と密接した行事のように感じる。一斉に買い物を済ませると、家族が揃って祝う。日本でいう正月のよ うだ。店もその後数日は閉まるし。その日はバイエルン料理を作って、プレゼントを交換して、それから遅くまでワイン、ウィスキーとゆっくり飲んでクリスマ スを祝った。こんなにのんびりできたクリスマスは始めて、そしてヨーロッパでクリスマスを過ごすのはもう二度とないかもしれない。貴重な経験だった。 25日、夕方の列車でウィーンに戻る。スキー板を担いだ人が多い。どうやらザルツブルクでスキーをするらしい。他にも子供の集団が思い思いにゲームを始め てうるさい。「それもザルツまでの辛抱」と思ってたら突然列車が止まった。アナウンスの内容は解らなかったが、周りの人達が「壊れた、壊れた」「1 間・・・」と言っていたので列車故障で、動けるようになるまでに1時間はかかるらしい。30分が経ったころ再びアナウンスがあり、乗り換えるよう指示がで た。そこで線路に下ろされ向かいのホームによじ登る。しばらくしてチューリヒ発の列車が臨時停車、それに乗り換えウィーンに45分ほど遅れて到着した。こ のようなハプニングは異国の地ではかなり焦る。無事が何よりだった。
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乗り換えた列車の標示

12.20 今日で語学学校も来年まで一休み。ドイツ語は何から何まで面倒だ。男性名詞、女性名詞等のほかに DativAkkuzativだなんだかんだと覚えなきゃいけない物が多すぎる。やっと一つ覚えたと思っても翌日にはまた似たような物が新しく出現するので、反応の鈍い頭には相当こたえる。それも来月まで2週間以上の休みだ。やれやれ。 今日は夜久しぶりにオペラに行った。出し物は「ラ・ボエーム」。普段からオペラをほとんど見ていないので、恥ずかしながら僕にとって初めてのプッチーニ。 が、当日のパンフレットであらすじに目を通しただけでも、充分楽しめた。先日ワーグナーでは一つの出来事が終わるまでに15分とか20分とかかかるのに、 今日は展開が早い。喜劇あり悲劇ありで、音楽ともにそのメリハリの鮮やかなこと。オペラに嵌まる気が良く解る。終幕は涙なしでは見られない。けど途中、吉 本新喜劇を一瞬思い出したのは不謹慎か。
12.17 先日15日、同じウィーンに留学中のQ.アルモニコのメンバーが呑みに来た。大勢集まるとやはり日頃食べられないものをということで、再び鍋!!!その日 は日曜なので前日にナッシュマルクトへ買い出し。「スキヤキ」とカタカナで書いてあるお肉屋さんで牛と豚肉の薄切りを買い、白菜、もやし、ホウレンソウ、 青ネギ、洋ネギ、大根などをどっさり買い込んでおいた。当日下ごしらえをしていたら突然の停電にあい、一時はどうなるかと思ったけど(ロウソクの火だけ じゃちょっとさすがに食べられない、闇鍋にすればよかったかな)30分ほどで復旧。夕方過ぎから続々と集まりだし、鍋以外にももやしとホウレンソウの炒め もの、おつまみキムチ、浅漬け、だし巻き玉子等あるもの総動員して楽しい宴となった。当然仕上げは雑炊。肉だけで1キロはあったし、もやしとホウレンソウ も1キロ、大根は1本、白菜も3/4、雑炊はスープも残らず全て食い尽くして帰っていった。恐るべしアルモニコ。みんなで写真を撮ろうと思って用意してい たのに、忘れて何も撮らずじまい。せめて鍋の写真だけでも撮ればよかった・・・・。 しこたま飲んだ翌朝、起きてみると一面真っ白の雪景色。街もクリスマスに向けて盛り上がってきた。
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12.14 昨日は昼間、ウィーン・フィルの公開GPに行った。指揮はバレンボイムで、弾き振りをしてのベートーヴェンの第3協奏曲、休憩を挟んでシェーンベルク:管弦楽のための5つの小品とワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」。 生バレンボイムを聴くのは実は初めて。しかもピアノのついでに聴けるのでお得感が増す。だが、協奏曲はソロを聴くよりもついついオケの音と彼の指揮に目が 行ってしまう。彼が振ると内声が充実するように思う。気のせいかもしれないが、彼のピアノもオケとおんなじ音がするので、彼の好みのサウンドなんだろう。 で協奏曲を通した後も数箇所、摘んでいた。木管の音程が気になるらしく、ゆっくり音程合わせをしていた。「ウィーン・フィル相手にそんなことするなんて、 なんて大胆な!!」と、つい思ってしまう。 休憩後のシェーンベルクもワーグナーもほとんど通しただけ。ワーグナーではホルンが響きまくり。ホルンは上手側に横一列に並んでいて、ステージ後ろ両端に ある凹み(ポディウム席があるところ)で反響してからホールに届いてくるので恐ろしいくらい響き渡ってくる。ホント巧く出来たホールだ(オケがホールの扱 いを知っているとも言える)。それと、バレンボイムは弦楽器のトレモロを「速く細かくではなく、ゆっくりバラバラに刻んで欲しい」様なことをジェスチャー していた。

12.12 毎日とっても寒いっス。昨夜、シュテファンス・ドーム付近を歩いたときは寒いを通り越して痛かった。体感温度は-10近かったんじゃなかろうか。実際-7~8が最低気温の日々が続いている。 そんな中、演奏会三昧。モザイクQを聴いた翌8日はハーゲンQに行った。相変わらずの精度の良さに驚かされる。でもやっぱり良かったのは後半演奏されたモーツァルト:クラリネット五重奏曲。涙が出るくらい美しいかった第2楽章は一生忘れられないだろう。 そして9日はアルテミスQにアルバン・ベルクQのヴィオラとチェロが加わっての弦楽六重奏演奏会。メインはブラームスの2番だった。アルテミスQはまだ若 いカルテットだけど、技術の確かさに熱気のこもった演奏が加わってこれも素晴らしい演奏会だった。客席からも盛んにブラボーが飛んでいた。 昨日はバレンボイム指揮ウィーン・フィルのリハーサルを覗く。やっぱりムジークフェラインは良い響きがするねえ。あんなホールで練習できるなんて羨まし い。バレンボイムが弾き振りしてのベートーヴェンの3番は、まず最初の弦の響きにビックリ!!そしてバレンボイムの楽々とベートーヴェンを弾いていること にも驚いてしまう。棒はけっして上手に見えないんだけど、オケの扱いには慣れているように見える。内声部のキザミをかなり充実させるとことか、「あんなに 弾けたら気持ちいいだろうなあ」とついつい自分が弾いているつもりになってしまう。そしてメインであるワーグナーの「トリスタン」からいつもの「前奏曲と 愛の死」は、言うに及ばず。明日の演奏会(公開GP)が楽しみだ。

12.7 今日は昼頃から雪がちらつきだし、車の屋根をうっすらと白く化粧した。雪を見るのはこの冬初めて。外にでてみたら、やっぱり寒い。それでも日本にいた頃はあまり見なかったので、雪が降るだけで何だかとてもワクワクする。 先週末から演奏会続き。まず4日にファビオ・ルイージ指揮ウィーン響で「幻想交響曲」を聴く。買った席がティンパニの真後ろ。打楽器が仕事をすると何も聞 こえなくなるのは参ったが、目の前で繰り広げられる職人技に思わず見とれてしまう。時に、シンバルのおっちゃんが面白かった。ただ「叩く」だけの作業の中 に、あんなに表現力があるとは・・・。普段はイスに座ってやる気なさそうに叩いているんだが、ここぞ!って時に出る音の素晴らしさはなんなんだろう。長年 のオケ生活で完全に曲を把握している感じがした。全体的にもルイージはとても良い指揮者だ。とても細かいニュアンスを丁寧に作っているのも解るし、アグ レッシヴなシーンでは相当強烈に音を求める。オーケストラも彼を気に入っているのか、打楽器セクションからも盛んにブラボーが飛んでいた。 そして翌5日はウィーン・アルティスQの演奏会。ウィーンに来て2回目。前回はシューマンが素晴らしかったが、今回は最初にやった「モーツァルト:プロシ ア王」がとても良かった。初めて聴くこの曲を、各パートが複雑に絡みながら技巧的にも難しいパッセージを鮮やかに決めていく様は見事。後半のドヴォルザー ク:弦楽五重奏曲は俺にとってはテンポが速くて落ち着いて聴いていられなかった。でも、あのテンポで弾ききってしまうのは相当テクニックがないと無理だろ うな。三谷幸喜似のファーストVnが僕はお気に入り。セカンドのマイスルさんはサービス精神おう盛で見ていて楽しいし、林家こぶ平似のヴィオラとの絡みも 面白い。終演後、楽屋にお邪魔してセカンドとこぶ平さんとは話しをしたが、お気に入りの三谷幸喜とは近くにいるにもかかわらず気後れして話せなかった。 もっと積極的にならねばと、後になってとても後悔。 今日は、コンツェルトハウスでモザイクQのベートーヴェン:4番&7番の間にハイドンの65番を聴いた。ハイドンの出だしはベートーベンの4番のそれとう り二つ。調性も同主調どうしのC-Durc-mollだ。始まった瞬間、客席からかすかに笑いが漏れたのもうなずける。狙った選曲だろう。個人的には後 半の7番が雰囲気があって楽しめた。派手ではないものの、バロック奏法をうまく取り入れつつ味わい深い演奏。このカルテットはあと3回、全てベートーヴェ ンとハイドンの組み合わせで演奏会があり、ベートーヴェンは後期作品を取り上げてくれるので今からとても楽しみにしている。


12.3 昨日あたりからグッと冷え込んできた。今年は例年になく暖かい日が続いていたそうだが、これから本格的な冬にやっと入っていくのだろう。 先日の鍋パーティは適当に作ったにしては上々の出来栄え。鳥ガラと昆布で出汁をとり鳥もも肉をメインに、野菜をふんだんに入れた。値段の高い味ポンを買わ ずに、醤油、レモン、ライム、鰹出汁などで簡単なポン酢を作った。これも結構いけた。鳥の皮は唐揚げに、余った鰹出汁でだし巻き玉子、臭いの気になる豆腐 は豆腐ステーキにして誤魔化し、鍋の仕上げは当然雑炊。玉子を割り入れてから2分ほど、残ったスープを御飯に全部吸わせるように蒸らす。最後はスープごと 全部平らげた。やはり日本人、日本食を食べるととても落ち着いた気分になる。いろいろ話も盛り上がり名残惜しかったが、終電があるので急いで駅に向かい駅 で待っていた最終電車に乗りこんだ。これで一安心、と思った瞬間、反対側の列車が動きだすのを見て自分が逆方向の列車に乗ったことに気がついた。が、もう 時すでに遅く乗った列車も動きだしてしまい、途中で降りてタクシーで帰る羽目になった。これだったらもうちょっと飲んでくればよかった・・・。

11.30 今日は久しぶりに空が晴れわたり、気持ちのいい一日。1週間ぶりじゃなかろうか。土曜日ということもあって、上の階から掃除機の音が聞こえてきた。いくら どんよりしたウィーンの天気に慣れているとはいえ、晴天は万国共通の気持ち良さなんだろう。僕も洗濯を終えて、昼過ぎにナッシュマルクトに向かう。明日、 知り合いの人宅で鍋パーティがあるのでそれの買い出しのためだ。ナッシュマルクトは、年末のアメ横を思わせるほどの人で真直ぐ歩けない。2m先のお店に行 くのも人を掻き分けてやっと辿りつく。またここには豆腐やもやし、【Original Shiitake】と書いた椎茸など鍋に欠かせない食材が揃っている。お金をかければ冷凍のおでん種セットや納豆、寿司ネタもあるくらいだ。一通り材料を 買い込み、さらに今日の夕飯用として豆腐と麻婆ジャンとかいう麻婆豆腐用のスパイスを買った。 家に帰ってきて豆腐を出したら何やら臭い。いわゆる酸っぱい臭い。とりあえず水にさらしてみたけどあまり効果無し。でもせっかくの麻婆豆腐気分を変えるの は難しいので、湯通し、さらにちょっと試食。多少は臭うが「ウィーンの豆腐だから」ということにして作ってみる。レシピは以前テレビで観た「陳健一の麻婆 豆腐」のメモを参考に適当にアレンジ。出来栄えは見た目は麻婆豆腐そのもの、味は牛挽肉の香りが強かったものの初めてにしては上出来。豆腐の匂いもスパイ スに上手く隠れている。久しぶりに御飯を炊いて、麻婆丼にして食べた。ドンブリにして2杯強をあっという間に平らげてしまった。今のところ、豆腐に中たっ た形跡は無し。多分大丈夫だろう。
11.29 先日レコード店に立ち寄ったところ、アバドの新しいDVDをたまたま見つけた。物は去年ベルリン・フィルとイタリアで行われたベートーヴェン・ツィクルス から2番と5番、もう一つは97年ウィーンでやはりベルリン・フィルとの「ドイツ・レクイエム」だ。日本ではまだ見たことが無かったので躊躇無く購入。い ましがたベートーヴェンを見終えたところだ。感想は、アバド、元気で良かった。そしてオケのノリの良さ。編成は12型で全て2管編成。普段よりかなり弦楽 器の数が減っているにもかかわらず、弦の鳴りは良さそう(録音だからね、本当は解らないけど)。でもティンパニがかなりイケイケ状態に見えたから、多分そ うとう鳴っているはず。で、推進力がまた凄い。普段のBPOより2割り増しって感じだ。ベルリンはこんなベートーヴェンをもうすでに演奏しているの か・・・・。 自らガン告白、そして激痩せして復帰、ベルリン・フィルとの末期は、元気なころのアバドを知っているだけに見るのも辛かった。でも今回DVDだけど、生き 生きと振っているアバドを見てホントに嬉しい。僕の青春時代(クサイ響きだな)、彼の演奏に出会わなかったら今こうしていないだろうと思う。このベートー ヴェン、どうやらシリーズ物になりそうで、いずれ全曲揃うと思われる。日本でも近々発売されるかもしれない。そうなれば、是非見て欲しい。

11.27 今朝は学校の授業料の払い込み、電話の支払い、そしてクリスマスにミュンヘンに遊びに行く切符を買いにと雑用に追われる。まず銀行で授業料の振り込み。先 日、学校のKassaに行って、「ここでカードで支払いたい」と言ってみたら、「バーコードで管理しているので銀行に行くように」との返事。仕方なく銀行 に向かったわけだ。振込用紙に「クレジットカード・・・」と書いてあるのでも、しかしたら銀行でもクレジットカードでの支払いが出来るのではと淡い期待を 持ちつつ窓口で尋ねると、やはりそこの銀行の口座を持っていなければ駄目で、やはり現金払いのみ。何故そこまでクレジットカード払いにこだわるかという と、キャッシュで機械から引き出すのと、カード払いだと1オイロあたりのレートがかなり違うからだ。今のところ最大で5円ほど違う計算になる。これは大き い。例えば1000オイロだったら日本円に換算して5000円の違い。これだけで10日間は楽に暮らせる(食費のみ)。 失意の中、今度は郵便局で電話の支払い。こちらも同様。額面が219.47オイロとなっているので220オイロを出して待っていたら、係の兄ちゃんが 220.47よこせ」と言う。「はは~ん、きっと半端な小銭じゃなく1オイロをお釣りとして渡したいからそういうんだな。さっきから1オイロって言って るし」と勝手に想像し小銭を探すがあいにく0.43しかなく、お金がないと言うとすごく不満そうな顔をする。そして220オイロをそのまま持っていってし まうので、「え?お釣りは?」と身振り手振りで伝えると呆れたような顔で紙に書きながら、「手数料が1オイロ、足して220.47!!」と言ってきた。な るほど!!、さっきから解らなかった単語「Gefuhr」(本来ならウムラウト付きです、表示できないため省略)が「手数料」だったのだ。やっと相手の 言っていることが解ったので、残りのお金を支払って窓口を離れたら後ろには長蛇の列が出来ていた・・・。たった数分の出来事だが、とっても疲れた。でも、 一生忘れないだろうな。 そして駅での切符はあらかじめ紙に書いて持っていったこともあり、問題なく買えた。駅の窓口は外国人慣れしているので英語も通じるしとても親切。こっちが ドイツ語で一生懸命話しても英語で返ってくるけど、まあいいか。慣れない土地で初めてのことをするって、簡単なことでも大変です。

11.26 今朝8時過ぎにテレコムの人が来て、新しい住まいにもやっと電話がついた。工事の人は前の住まいの時にも来た人。向こうも覚えていてくれていた。一月前よ り多少ドイツ語で話せたのが嬉しい。向こうの言っていることも前回よりは解った。別れ際に「また次回も会いましょう」って言ってた。 これでまたメールやインターネットが楽しめる。つい最近までなくても不自由しなかったのに、あると便利で欠かせないものになってしまった。携帯電話然り。 この1週間、浦島太郎状態だったので早速プロレスの動きをチェック、それから日本の新聞サイト、シュターツ・オーパーの残席状況など、あっという間に時間 が経ってしまった。それからメールも大量に溜まっていた。といっても半分が広告だったが。

11.24 昨晩はアパートの大家さんが夕食に招待してくれた。旦那さんはイタリア人で料理好き、当然イタリア料理。といってもパスタやピザではなく、どれも初めての 料理だったけど美味しいワインとともにそれは素晴らしいディナーだった。サーモンの前菜(このソースも美味しかった)のあと、チーズや卵のつなぎを入れて 団子状にしたホウレンソウを焼いたものが出てきた。「草餅か?」と一瞬思ったけど、チーズの香りが心地よくイタリアンそのもの。作り方自体はそれほど難し そうではなかったけど、チーズの種類に秘訣があるらしく覚えきれなかった。そのあとは、牛ステーキ。数日前、大家さんと日本の牛肉は高いけど美味い・・・ などひとしきり盛り上がったのだが、こちらの牛肉も美味しいし、そして焼き加減が絶妙!!さらに、かかっているオニオンソースがまた素晴らしい。これも作 り方は簡単。タマネギを炒めて、そこにクリームと洋カラシ、塩・コショウだけだそうだ。どれもシンプルなんだけど、とっても豪華に見える。こんなに食べた のは久しぶり。もっと食べたかったけど身体が持たなかった。僕は、招待していただいたお礼のつもりで白玉団子ぜんざいを作って持っていったが、白玉の食感 が「チューインガムみたいだ」と言われてしまい、意外と不評。奥さんが好意的に食べてくれてのが嬉しかった。 もう一品のデザート、洋梨のコンポートを食べたあとコーヒーを飲みながらいろんな話しをした。こっちの人達は話し好きというか、ずーと喋っている。僕もぐ ちゃぐちゃのドイツ語交じり英語で話しをした。ただ、難しい話になってくると言いたいことは山ほどあるんだけど1割も伝えられるかどうか。しかもお酒が 入っているので余計頭が回らない。それでも本当に一生懸命聞いてくれるので嬉しい。一つ伝わった時に得られる達成感は、日本では味わえないことだ。

11.22 今日でウィーン生活ちょうど2ヶ月。依然ドイツ語は上達せず。実際話す機会がないってのはしょうがないか。先生とも新しい住まいの大家さんとも英語で話し てくれるので、毎日行っている語学学校だけではドイツ語はなかなか上達しないようだ。上達したのは料理の方。外食しても日本のようにとびきり美味しいもの に出会うことは少なく、どれも普通の家庭料理に毛の生えた程度(中には毛の抜けたようなのもある)。ならば、自分で作ったほうがよっぽどマシで安上がり。 昨日はカルボナーラ・キムチ・スパゲティ。ウィーンでこれを食べられるのはうちしかないだろう。レトルトだけど。と、こんなことを書いているとお腹が減っ てきた。今日作った出汁もあるのでうどんでも食べるか。

11.17 昨日はSAKURA Kammerorchesterの演奏会だった。会場はウィーンのヤマハホール。立ち見が出るほどの盛況ぶりで嬉しくなる。日本を離れて約2ヶ月ぶりの本 番で、とっても緊張するかと思っていたが意外と冷静に弾けた。弾いた感想として、もう少しホールが柔らかい響きだと、一曲目の武満「レクイエム」など心地 よく聞けたんじゃないだろうか。直接音が多いと音色の変化を楽しめない。また、チャイコフスキーも同様、狭い会場でやるにはもう少しダイナミクスの差を考 えて演奏すればよかったと思う。メンバーはみんな積極的に演奏するのでとってもいい刺激を受けた。それと、今回ソリストを務めた和久井冬麦ちゃん。まだ8 歳だそうだが、立派に演奏して拍手喝采を浴びていた。演奏するのが楽しくて仕方無いような感じで、ある意味羨ましく思った。末恐ろしい。 打ち上げは中華食べ放題、鱈腹食べて飲んで帰るのが惜しいほどだったけど、終電があるので仕方無く帰った。 昨日の疲れか、今日は一日ダラダラと過ごす。練習を始めても眠くて仕方無い。昼と夕方と2回、軽い睡眠をとった。疲れているときは休むに限ると勝手に思い込んで、あまり練習しなかった。

11.15 明日ウィーンのヤマハホールで行われる、SAKURAの練習があった。チャイコフスキーはずーと弾きっぱなしで疲れる。周りのメンバーは僕よりも当然若 く、若さ溢れてますって感じで30過ぎのオジさんんにとっては厳しい。でも、久しぶりの演奏会楽しみだ。ふ~、今日は朝から練習とレッスンと合わせでとっ ても疲れたので、ここまで。

11.14 SWR Sinfonieorchesterの演奏会があった日、StaatsoperではN響でもおなじみの準・メルクルがバレエを振っていた。終演のころ、た またまOperを通りがかったので彼を探したら、楽屋口を出たところでお客さんの一人であろうおばあさんと話しをしてた。おばあさんが帰ったあと、早速メ ルクルを呼び止めると覚えててくれた。12月や1月もオペラを振るとか、3月のN響ワーグナー「ジークフリート」、来年10月にN響で3つのプログラムを 振るなどいろいろ話をしたあと、「今度僕がオペラを見に来た時は一緒に御飯を食べに行きましょう」と約束して別れた。こっちだと指揮者でも誰でも気軽に話 かけられるのがとても良い。電車を待ってたら見ず知らずのおばあさんが話かけてくるし、食事をしてたら隣のテーブルのおじさんが話かけてくる。みんな話し 好き。こっちもドイツ語がもっと話せたら楽しいのに。

11.12 一昨日のツェートマイヤーがソリストの演奏会、本来はバーデン・バーデンとフライブルクのSWR交響楽団のもの。一曲目にイザイ:無伴奏ヴァイオリンのた めのバラード、オーケストラがチューニングを終えてステージ上に並んでいるなかに、一人ツェートマイヤーが現れ、おもむろに無伴奏を弾きだす。出だしの恐 ろしいほどの、会場の咳払い一つが気になるほどのppから楽器の限界を超えたffまで、鳥肌が立った。素晴らしいの一言。そしてホリガー(オーボエ奏者と して有名、本人の指揮による)ヴァイオリン協奏曲、これが長い。ゆうに45分はやってた。アイディアは面白いところもあるんだけど、何もそこまで長くなく ても良いんじゃないって感じ。ハッキリいって飽きた。休憩後はシューマン:ピアノ独奏による5つの初期の歌op.133、この曲のためだけにピアノ独奏者 がいるってのも普通じゃ考えられない。でも、演奏も良くていい曲だということがよーく伝わってきた。さすがシューマン。で、最後はそれをモティーフにした ホリガーの初期の歌?(多分)。これには合唱がつき、合唱がシューマンを歌っている裏でオケが不協和音を鳴らしたり、まるっきり違う旋律を延々と重ねたり して、それはそれで楽しめた。美しいものに汚いものを混ぜると、余計に美しいものがクローズアップされるのかな、無情に美しく感じてしまったのも確か。オ ケは高性能、優秀なオケだ。この演奏会、全体的には楽しめたけどヴァイオリン協奏曲は駄作だな。 さて、昨日はツィンマーマンとシフ、ツァハリアスのピアノ・トリオでベートーヴェン1,2&7番。弦の二人が目配せやらボウイングやらでコンタク トとりながら遊び過ぎ。楽しかったけど、ピアノだけがまじめに弾いているように見えて可笑しかった。僕が買ったチケットはPODIUMというステージ上の 後ろの席、だけど知らないでステージの前の方に座っていたらそこは本来Orchesterという席らしく値段も上。だけど誰も来なかったので、間近(演奏 者まで5mくらい)で演奏を聴くことが出来た。ラッキー。

11.9 今日から引っ越しを始めた。大体の荷物は運び終えて、あとはこまごましたものを残すだけ。大きなスーツケースに布団やらを詰め込んで3往復した。「これで 最後」と楽器とスーツケース、かばんを持って西駅から地下鉄に乗るとき、スリに遭った。たまたま先に地下鉄に乗りこんだ男性が乗り間違えたのか慌てており てきた時に、後ろにいた外国人風の2人連れがズボンの後ろポケットに入れている財布を抜き取ろうとしていた。スーパーの袋で手元を隠しながら・・・。瞬間 的に気がついてポケットを押さえたから何も盗られなかったけど、しばらくはドキドキしてた。こっちは見るからに旅行者風、しかもあまり治安の良くないとさ れる西駅での出来事だけに、ホント注意していないと大変な目にあるところだった。それとも、慌てておりてきた男性も仲間だったのかな?ドサクサ紛れ に・・・、話には聞いていたけど一瞬注意力がそがれる瞬間があるのは確か。皆さんも注意しましょう。

11.8 今日の午後、来週末ウィーンでやる演奏会のリハーサルがあった。ウィーンに来て初めてアンサンブルをする、楽しみなはずなのにそれ以上に緊張して練習会場 に向かった。そのアンサンブルはウィーン在住の日本人で構成されていて、20世紀の作品と邦人作品を取り上げることをモットーとしているそうだ。今回は武 満の「弦楽のためのレクイエム」を取り上げる。みんな気さくな感じですぐに気持ちもほぐれて一安心。メチャクチャ怖い人たちだらけだったらどうしようと密 かに不安だったのだ。 その後毎日のようにゴキブリほいほいを覗くものの敵も然る者、どうやら危険地帯を察知したらしい。一昨日は隣の部屋の住人がネズミを捕まえたと言ってい た。隣人宅に避難したようだ。時折それらしい物音はするものの、姿を現さない。今日、大家さんがネズミ駆除業者を連れて現れ、何か効果的な対策を施してく れるのかと期待してみていたら、出そうなところに簡単な道具を置いただけで帰っていった。「なんじゃ、そりゃ!!」ネズミ駆除の専門家なら、ネズミの好む 通り道とかプロしか解らない仕事をして欲しいものだ。それなら俺でもできんじゃないの?って思った。 と文句を言ってももう遅い。というのもやっと新居も見つかり、徐々に片付けだした。明日には荷物を運び出して、できればこの週末でなんとか終わらせたい。 今度の住まいは今のところから地下鉄に乗って一駅のところにある。スーツケースや段ボールで何往復すれば事は足りるのだろう?そんなわけで、引っ越し先に 電話がつくまではしばらく更新が途絶えるかもしれません。あしからず。

11.5 今朝も小さいの(昨日の兄弟か)が出没、いつもまにか隙間に入ってしまった。やっぱり想像したとおり。こっちも慣れてきているのが自分でも怖い。今までで 1番出没率の高いキッチン・シンクの下に設置した「ゴキブリほいほい」、先程確認したところ1センチほど動いていた。ということは、中に獲物が掛かっているか、上手く逃げられたかのどちらか。覗くのはちょっと厳しいので、もうしばらく様子を見る。
昨晩、大変なことが起こった。ここのところА線の調子が悪く、新しい弦に替えてみたりしたけどどうも良くない。「駒の位置かも」と ちょっと動かしてみたら、倒れて真っ二つに割れてしまった。とりあえず、アロン・アルファで付けて適当に立ててみたらそこそこの音は出た。が、さすがにこ のままって訳にも行かないので必要最低限のドイツ語を作り、頭の中で楽器屋に行ってからのシュミレーションをしてみる。ウィーンでは楽器屋には行かないで 済むよう、日本を出るときに弓の毛替え、1年分の替え弦、調整と済ませて来たのに、さっそく言葉の通じない異国の地でこのような事態になるとはまるで試さ れているかのようだ。何やら波乱含みの11月となりそう。

11.3 ついにミッキー捕獲!!久保さんに頼んで持ってきてもらった日本の偉大な発明品「ゴキブリほいほい」にねずみがかかりました。ガタガタ音がするなと思い設 置した場所を覗いたら、縦に置いたはずが横になって10センチほど移動している。もう鳥肌立ちました。とても覗き込むなんてできず、どうにかゴミ袋に入れ て外に捨てました。捨てに行く途中、ガサガサ動く振動が袋を通して伝わってくるのが生々しい。捨てた瞬間チューチュー鳴いてました。はぁ、やっぱり引っ越 しだ~。
今朝(上を書いたのは夜中)起きてふと足下を見ると、子ねずみ発見!!まだ世の中の恐ろしさも知らない感じで、こっちが見ているのも知 らずヨタヨタ歩いていた。かわいいことはかわいいんだが、所詮ねずみ、数ヶ月したらもう立派な大人となってその辺を荒らすとなると、温情をかけてもいられ ない。近くに「ゴキブリほいほい」を持っていって、軽く驚かしたら簡単に捕まった。
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こんなに小さいと、数ミリの隙間からでも出てこられる。子供が一匹ってことはないので、まだまだ敵は多いようだ。この調子だと今晩も捕まるんではないだろうか。


11.2 とうとう11月になった。10月はあっという間だったな。語学学校を一月通って、初歩クラスの修了証をもらった。嬉しかった。 昨日はN響のティンパニ奏者、久保さんが1日だけウィーンにいらして、一緒にシュターツ・オーパーで「神々の黄昏」を聴いた。ストーリーも何にも知らずに 行ったけど、演出がまともだったせいかおぼろげながら意味が解ったのが嬉しい。座席の前に小さな字幕スーパーがあり、最初は英語で見ていたけど、せっかく ドイツ語で歌ってるのでドイツ語に切り替えて見ていた、見ていただけだが。オーケストラのみでよくやる「神々」抜粋で何度か弾いたことのある箇所と実際の 場面が初めて一緒になって、「なるほど!!」と感激、オペラに興味が湧いた。ここにいる間に、「指環」を全部見てみよう。オケは当然、ウィーン・フィル本 来の姿、シュターツ・オーパー管、指揮はアダム・フィッシャー。先日聴いたイヴァンと兄弟の指揮者だ。棒にはあまり感心しなかったけど、しきりに客席から ブラボーが飛んでいた。座席が1階平土間の前から7列目だったこともあり、オケの音がビンビン聞こえてくる。いろいろミスはあるけど、「いざっ!」って時 になると凄い音が響いてきてさすがウィーン・フィル!!長い演目も退屈せず最後まで楽しんで聴けた。幕間にピットを覗きに行ったら、フルートの譜面に 1970,Stein・・・』『Karajan』と、配役と当時の歌手、演出とかが書いてあった。「あ~、シュタインがこれを振ったらすごいだろうな」 と想像するだけでワクワクする。一昔前までは、アバド、ムーティ、マゼール、シュタイン・・・・と、錚々たる指揮者陣が振っていた。今はほとんどそういう 機会が無いのが惜しい。 「神々」は再来年、N響がメルクルとやる予定。当然その時、僕はピットに入ることになる。1幕だけで約2時間、その後も1時間と1時間半近くで、こんな長い曲を弾くのかと思うと、まずは基礎体力から鍛えないと到底無理だな。恐れ入りました。