過去のBlog 2007年12月

◆12月25日《楽譜について》
今年最後のプログラム、恒例の第9がやってきました。なんか、今年はあっという間でした。何してたんだろ?

今年はニューヨーク出身のアンドリュー・リットンが指揮してます。プログラムにはベーレンライター版使用と書いてあり、確かに指揮者もそのスコアを使ってはいますが、いろいろ手を加えています。例えば、スケルツォ楽章でホルンにメロディを吹かせたり、他にもヴァイオリンを1オクターブ上げたりしています。こういった場合は、リットン版というほうがスッキリします。まぁ、昔は出版楽譜も少なく指揮者やソリストによっていろいろ手を加えるのが当たり前だったし、それがオリジナリティの証だったりしてましたが、現代のように研究によって新版が次から次へと出るようになると、演奏者としても「何版を使うのだろう?」という興味は毎回あります。特にバッハ、ハイドン、モーツァルトやベートーヴェンは使う版によって印象がまるで変わってくるので要注意です。
最近ではバッハやモーツァルトはベーレンライター版が主流となりましたが、ベートーヴェンは長年使ってきたブライトコプフ版から、ベーレンライター版、ヘンレ版など新版への移行する過渡期と言えるかも知れません。

僕が留学をした時のテーマが「ドイツ音楽を楽譜から正しく理解すること」だったので、この手の話題はとても気になります。うちの先生(クリスティアン先生)はいつも、「原典版を使え、楽譜に手を加えるな」と口を酸っぱくして言っていたし、新しい譜面が出版されると手に入れて違いを吟味するくらい楽譜重視の先生です。ラロのスペイン交響曲のヘンレ版が出た時は、「スコアに忠実にテンポを再現するのはすごく難しい」と言いながら嬉しそうに違いを説明してくれました(そのヘンレ版で演奏した録音がソニーから出ています)。

話が逸れましたが、新版で徹底的に読み直したベートーヴェンを一度やってみたいと思いました。



◆12月8日《ギルバートで2プログラム》
若きマエストロ、アラン・ギルバートで
12月の定期演奏会は2つ、プログラムが組まれました。どちらもベートーヴェンが入っています。
A
定期 1212
メシアン:ほほえみ  ベルク:ヴァイオリン協奏曲(F.P.ツィンマーマン,Vn.)  ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
C
定期 1278
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲、ピアノ協奏曲第4番(サイモン・クロフォード・フィリップス,Pf.)  マルティヌー:交響曲第4番

ギルバートはしきりに「私を見てくれ」と言います。見ることでよりコンタクトを密に取ることが出来るのが大きな理由ですが、彼を見ながら弾くと音楽にすぐ引き込まれてしまいます。いつも目が合う気がするし、 棒を見てると何をやりたいのかもホントによく解る。若いのにさすがです。
「英雄」交響曲でのイマジネーションの豊富さ、マルティヌーのような馴染みの薄い作品でもしっかり聞かせる説得力、どちらもとても勉強になったし弾いてて楽しかった。これからはますます忙しいとは思うけれど、また是非振りに来て欲しい指揮者です。